「人件費」はクリニック経営においてウェイトを占める固定費です。診療報酬のマイナス改定などもあり、厳しい環境の中で「コスト管理」はクリニック運営を左右すると言えるでしょう。このページでは、人件費の問題点や対策について解説します。
開業初期の段階では集患が安定しない可能性を想定し、人件費を抑えてスタートさせる方法が安全だと考えられます。ですが、人材確保のためにスタッフの給与や福利厚生などの充実など、他のクリニックとの差別化を図ることは避けられません。クリニックの立地によっては医療スタッフの確保が難しく、人件費の設定には慎重な判断が求められます。
クリニック経営の人件費を管理する上で指標となるのが人件費率です。
人件費率とは、収益に対して人件費がどれだけ占めているかを示す比率。人件費には賞与、通勤手当、福利厚生費、研修費、社会保険料なども含まれます。収益を得るために要した人件費を比較し、クリニックの経営状況を把握するための基本的な指標となります。人件費率の数値が高すぎると経営の健全性が損なわれる恐れがあるでしょう。
人件費率の妥当なラインは診療科や経営規模によって異なりますが、以下の5つのポイントを指標とします。
参照元:TKC全国会 医療システム研究会公式HP(https://www.tkc.jp/igyou/manage_support/manage_labor_legal/006662/)
クリニックの収益を意味しますが、人件費の観点からスタッフ1人あたりの収益高を目安にすると人件費の妥当性の参考になるでしょう。
人件費に大きく左右します。地域性やクリニックの診療科目を踏まえ、適正な給与を設定する必要があります。給与水準を上げても1人あたりの生産性が高ければ、経営は上手くいっていると言えるでしょう。
売上高から変動費を差し引いたものを指す経営指標です。「限界利益 = 売上高 - 変動費」で算出し、売上と連動して増減する利益を表しています。
人件費に「生み出した付加価値をどれだけ人件費として分配したのか」を表す指標のことです。労働分配率が高ければ高いほど、人件費が圧迫していることを意味します。
ですが、必ずしも労働分配率が低ければ良いわけではありません。スタッフの確保や離職防止の観点からも、給与や待遇に関する対策が求められクリニックのスタッフの質に影響が出ます。コンサルタントに相談し、地域の医療環境に合った人件費設定を行うことが成功への鍵です。
適切にスタッフに報酬を支払うことで、離職率の低下やスタッフのモチベーション向上に繋がるでしょう。報酬が低すぎる場合、優秀な人材が定着せず離職率が高まるリスクがあります。スタッフの定着率が低いと、結果的に採用コストが増加し続けて経営を圧迫しかねません。
また、質の高い医療を提供するためには優秀なスタッフを確保し、彼らの能力を最大限に発揮できる環境を整えることも大切です。これにより患者満足度が向上し、長期的なクリニックの成長に繋がるでしょう。
クリニックの開業には、看護師と受付事務のスタッフの構成が小規模の人数となります。
広島県の看護師(※1)と医療事務の平均年収(※2)は以下の通りです(2024年10月30日時点)。それぞれ何人必要なのか、正社員ではなく派遣やパート・アルバイトで採用するのか、見立てを立てて人件費を検討しましょう。
職種 | 雇用形態 | 平均月収 | 月収換算 | 平均時給 |
---|---|---|---|---|
看護師 | 正社員 | 320万円 | 27万円 | - |
医療事務 | 正社員 | 300万円 | 25万円 | - |
医療事務 | アルバイト・パート | - | - | 990円 |
医療事務 | 派遣社員 | - | - | 1,195円 |
(※1)参照元:求人ボックス・給料ナビ「看護師(広島県)の仕事の年収・時給・給与」
(※2)参照元:求人ボックス・給料ナビ「医療事務(広島県)の仕事の年収・時給・給与」
クリニック開業時における人件費の管理は、経営の安定性を保つために欠かせない要素です。人件費率が高くなりすぎないよう計画を立て、適切な給与水準を維持することでスタッフの離職を防ぎ、安定した経営が実現できます。
ただでさえ開業準備は慌ただしく、採用や人件費まで手が回らない可能性があります。専門コンサルタントのアドバイスを受け、地域特性に応じた人件費対策を講じることで、クリニック経営を円滑に進めるでしょう。
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※1 参照元:2024/10 タカラベルモント公式HPよりhttps://www.takara-dental.jp/startup/